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いっぷくタイム*続々・毎日のいっぷく*



手のひら彫刻展 企画趣旨(ロングバージョン)

割と最近驚いたことの一つに雪舟の秋冬山水図があります。あの雄大なスケールを感じさせる作品が予想外に小さかったのでした。サイズと作品のスケールは全く別物である事を痛感しました。

私は生来小さいものが好きで魅せられてきました。
路面電車や軽便鉄道、ウォークマンやラジカセ、軽自動車、小径折り畳み自転車 、コンパクトカメラ、小さなペットたち、坪庭、狭小住宅、果ては小島や小国まで。病癖でしかないのですが、この頃再び小さいことがとても気になっています。

大きいことはいいことだ。そういう価値観は強くあって今も続いています。そこには驚きと迫力があり、威圧的で権力的であって、多くの人は圧倒され、羨望します。20世紀は科学によって人は更に大きな力を得て、大きさを得ることができるようになり、人力を越えて大きさを競うようになりました。それはアートにも共通します。

人には自分をより大きくより良く見せたい欲望があります。自分の作品にも同じ欲望が働いています。作品の巨大さは作品の価値とは無縁ではないですが、全てではないでしょう。
ヴォルスの素描、モローの水彩、クレーの水彩、金剛峯寺の諸尊仏龕、雪舟の水墨画、江戸の根付彫刻はその数百倍のサイズの作品に決してひけをとりません。

携帯電話やタブレット端末が世界を変えつつあります。これは極めて象徴的なことに見えます。
原発はマッチョである、とある人が指摘していました。ある試算では将来的に原発の不足分をを小水力発電によって賄えるというものがありました。マスからミクロへの転換。集中から流動への転換。
小ささによって解決することがあるのではないかと強く思うようになりました。
美術においてもその可能性があるのではないでしょうか
可搬性、制作場所、時間、展示スペース、材料費、道具、環境への負荷など美術作家が抱える多くの問題が軽減されます。

日本人は元来、限られたスペースでそれを超えたスケールを生み出すことに長けてきました。この民族的特性をアートに取り戻していいのではないかと思います。

小作品には独特の難しさが伴います。小さくとも大きいものを凌ぐというのは作家の技量が試されます。昨年、凝縮額絵という企画展でこうした意図を絵画作品で試みて非常に興味深い結果を得ました。これで発見した事は「凝縮」から生まれる作品の「比重」です。いい作品は比重が高いのです。作者の技術、思考、思想、経験、加えて背景となる歴史性、民族性、地域性などが凝縮し高い比重を生み出す。これこそ実寸の大小を超えたスケールなのです。

今回この立体版として手のひら彫刻展を企画しました。
比重の高い小さな作品をぜひその目でお確かめください。

ArtLabo深川いっぷく ディレクター 白濱雅也
by ippuku3 | 2013-04-28 09:48 | ★ギャラリー
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「アート」と「かかし」の深川資料館通りから★★TEL: 03-3641-3477

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